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エアコン工事で世界を救うブログ

足場があるうちにエアコンの配管だけを事前に設置するのって大丈夫?

新築一戸建てへのエアコン取付工事でお客様ががっかりすることの無いよう、現役のエアコン取付工事の職人がアドバイスをいたします。

新築一戸建て、特に3階建て・2階建ての住宅において、『建築中の足場があるうちに配管を先行配管して仕込みましょう』、そんな事を推奨する工務店やエアコン工事業者が多いようです。私のところにも、お客様から「家を建築中なんですが足場を利用して先行配管のみを施工していただくことは可能でしょうか?」という問い合わせが月に数件あります。

先に結論だけ言いますと、(足場を使った)先行配管はお勧めしません。

そもそも先行配管って何?

エアコンは室内機と室外機を『配管類』(以下配管)で繋ぐ必要がありますが、配管の取り回しの方法(経路)で呼び方が異なります。室内の壁と外壁の間に配管を仕込む方法を『隠蔽配管』と呼び、これも先行配管の一種です。(今回のブログでは隠蔽配管は関係ないので先行配管ですが先行配管に含めないものとします)

一般的な工法である、外壁に沿わせて設置する方法を『露出配管』と呼びますが、エアコンの設置工事を行ないながら配管を取り回すのが通常のエアコン取り付け工事なのに対して、先行配管というのは安全に作業が行える仮設足場があるうちに配管とダクトを先行して取り付けてしまおう、という事です。

ちょっとややこしくてすみませんm(_ _)m 仮設足場が撤去された住宅で2階や3階の工事を行う際にはハシゴを使っての作業になるのが一般的です。ハシゴを立てるのに十分なスペースがない場合、ハシゴが垂直に近い角度になってしまうため、多くの工事業者は工事を行う事ができません。

それを回避するために仮設足場を使って配管工事のみ先に行うことを『先行配管』といいます。

※マンションでの『先行配管』とは意味合いが違います

2211438 / Pixabay

  先行配管を推奨する工事業者の言い分とは?

それでは具体的にどのような理由で『先行配管の設置』を勧められるのか、具体例とその問題点などをご紹介します。一つ一つよく考えるとご理解いただけると思いますが、どれも正解といえば正解ですが、誤りといえば誤りです。

足場がなくなってしまうと安全に作業ができない。

足場が撤去されてしまうと、2階や3階へのエアコン取り付け工事にはハシゴを用いた『高所作業』が必要になります。

ハシゴを足場にして外壁側の配管の工事を行ないます。ハシゴを立てるには広いスペースが必要になりますが、敷地が狭い場合はハシゴの角度が急勾配になり、環境によっては垂直・垂直以上の角度になってしまうこともあります。

隣地(お隣さん)の敷地をお借りしてハシゴを立てられる場合もありますが、エアコン取り付け工事が発端で隣人トラブルに発展してしまうことがある為、隣地をお借りしてのやり方は今回無視します。

足場(仮設足場)が無いと安全に作業ができないのは、あくまでその業者の技術レベルの問題です。

『できない』と言うのはいわば言い訳でしかありません。高所作業に長けた、あるいは慣れた業者であれば足場があろうがなかろうが安全にエアコンの取付工事を行うことが可能です。

住宅事情や法令が変わりゆく中で、それらに応じた変化や進歩のために努力や勉強をするのが我々工事人の本来あるべき姿ではないのでしょうか?

 

将来のエアコン交換時に配管はそのまま使用できるからいいですよ。

エアコンが壊れてしまったりして、エアコンの入れ替え工事が必要な時は必ずやってきます。

最初からエアコンの室内機室外機を入れ替えられるように先行配管をしてしまえば、エアコンの入れ替え時も同じように室内機室外機だけを入れ替えてしまえば比較的簡単な工事で済みます。

将来のエアコン交換時に配管をそのまま使用できるということですね。これは本当です。

ですが、あくまで『使用できる』だけであって『問題なく使用可能』ということではありません。

配管類の使い回し(再利用)は問題だらけです。冷媒管は概ね30年の耐用年数がありますが(曲げ加工等せずにそのままの形で使用する場合に限り)、室内機からの排水を担っているドレンホースの内部はカビだらけで酷い悪臭を放っていたり、様々な虫が湧いていることも多々あります

先行配管を使い回す場合、このドレンホースもそのまま使用することになります。また、化粧ダクトカバーの耐用年数は概ね10年です。(後ほど詳しく記載します)

→参考画像:古いドレンの内部のカビなど

→写真では分かりませんが中から出てきた液体はアメーバ状になっており、更に何かが蠢いていました。。。

論より証拠で、『使用できる』のと『問題なく使用可能』では雲泥の差があります。それでも先行配管を使い回しますか?

 

入れ替えの時に高所作業ができる業者を探すのが大変ですよ。(メンテナンス時も)

まぁまぁ言ってることは分かります。ですが、数年前から3階建ての住宅や狭小地住宅は非常に増えています。それに加えて、今は高所作業系の法令が変わりつつある2019年です。参考サイト:厚生労働省HP

私達職人側も色々と変化の時期にありますので数年後には高所作業に特化したエアコン工事業者も増えてくることは容易に想像がつきます。

 

エアコンは消耗品です、必ずいつか壊れます、その時に先行配管の方が手間がないのでオススメですよ。

これも正解です、ですが粧カバーダクトも同じく消耗品なのです。概ね10年で劣化してしまいます。(設置環境により差はありますが・・・)

例えばエアコンが10年で壊れて、配管類を使いまわしてエアコンを設置して、そこからその使いまわした配管カバーダクトは10年持ちません。

新品から考えると20年の計算になりますから・・・。

20年もすれば樹脂製のカバーダクトもボロッボロで醜い物質に変質しています。(太陽光が一切当たらない箇所に限り、あるいは劣化を免れるかもしれませんが)

なので上記のようなことを工事業者に言われたらこう質問するといいでしょう。

『ダクトカバーは20年も持つ物なのですか?』

おそらく答えは『多分大丈夫だと思いますよ・・・うん、はい、多分ゴニョゴニョ・・・』となるはずです。エアコン工事を長年やっていれば経年劣化で朽ちてしまったダクトカバーを触る機会があるはずですから。

心の奥底ではダクトカバーが20年も持たないことは分かっているはずなのに・・・何故彼等は嘘を付くのでしょうね?目先のことしか考えられないのでしょうか?

ElisaRiva / Pixabay

 

仮設足場を用いた先行配管のデメリット?

安全に配管作業を先行して行える、ということがメリットの『先行配管』ですが、このメリットって言い換えれば『工事業者に対するメリット』でしかありません。

施主であるお客様には然程メリットはありません。むしろデメリットの方が多いのです。

「足場ありき」のレイアウトになりがち

住宅を建築中の仮設足場は主に住宅を建てるために設置されたものであり、エアコン取付工事を行うために設置されたものではありません。

配管類をキレイにスッキリと仕上げることのできる『ダクトカバー』、上から下まで真っ直ぐ伸びているのが美しいですね。逆にグネグネ・カクカク曲がっていると見栄えが悪いです。

ですので、ダクトのレイアウト(経路)上に障害物などがなければ真っ直ぐに工事するのが一般的です。

ですが仮設足場がある状態で先行配管(ダクトカバー)を施そうと思うと、足場自体が妨げになって真っ直ぐなレイアウトが描けないことがあるのです。足場を回避して取り回さなければならないのです。

いざ足場を解体してみてびっくり、ダクトカバーがお客様が理想としていたレイアウトになっていなかった・・・なんてことが起こります。「足場があったんで・・・しょうがなかったんです・・・」なんて言われても既に取り付けられているのでお客様は泣き寝入りするしかありません。

 

高所作業に慣れていない工事人が施工することになる

仮設足場があるとはいえ、2階3階での作業は「高所での作業」になるので高い所に慣れていない人間は必ず恐怖心に襲われます。

そもそも仮設足場がないと高所作業が行えないエアコン工事業者 = 高所作業に長けていない(慣れていない) = 恐る恐るの工事になる = 完璧な施工品質は望めない

という構図になります。単純明快ですね。

どんなに優れた職人でも、恐る恐るで工事を行ったらいつもと同じ施工品質を生み出すのは難しいものです。

また、仮設足場が撤去されて、エアコンの設置工事も終わり、試運転の段階になって先行配管の箇所で不具合が生じてしまった場合、その工事業者では対応できませんよね。

 

というわけで、仮設足場を利用した「先行配管」について記事にしましたが、少々マニアック過ぎた内容になってしまいました。

先行配管は良い事ばかりじゃない、ということだけ何となく伝わってもらえれば嬉しいです。

  • B!

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