エアコン工事あれこれ話

一戸建て3階へのエアコン取り付け工事についての懸念

知っていますか?

エアコンの取付工事で特に一戸建ての2階や3階にエアコンを取り付ける際に必ず必要な『高所作業』(ハシゴを用いての作業)ですが、近年 労働者の墜落事故・死亡事故が相次いでいることもあり、高所作業における法令が変わってきましたがご存知でしたか?

最近では3階建ての住宅が多いのでエアコン取付をお考えの方には馴染み深い言葉かもしれない『高所作業』ですが、一昔前だったらエアコン取付工事の職人さんの『根性』でハシゴにしがみついたり、無理な体勢で工事を行ったりするのが一般的でした。

しがみつき

しがみつき

窓から身を乗り出す

お客様のエアコン取り付け工事における高所作業の認識もそんな感じかと思います。古いやり方はこれが当たり前だったのですから。

その認識、非常に危険なのでここでお話します。

労働安全衛生規則第518条によると・・・

  「高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう 場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み 立てる等の方法により作業床を設けなければならない」

資料:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11201000-Roudoukijunkyoku-Soumuka/0000142646.pdf

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/170322-1.pdf

と、定められています。2m以上で足場の無い箇所での作業は『高所作業』になります。

 

エアコン取り付け工事に当てはめてみると・・・

一戸建ての2階にエアコンを取り付ける場合の高さは概ね6m

一戸建ての3階にエアコンを取り付ける場合の高さは概ね9mにもなります。

たかがエアコンの取付工事ですが、2階や3階での工事は『高所作業』になります。(例:室内機3階 室外機地面設置)
当然、それなりの安全対策が必要になります。

 

じゃあ改めて足場を組んだら良いんじゃない?

そう思われる方が多いと思いますが、たかがエアコン取り付け工事のために大掛かりになってしまう足場を組む場合、エアコンが設置できるというメリット以上にデメリットがあります。

  • 足場の組み立てと解体も発生するからエアコン取付工事が1日で終わらない。
  • 足場のレンタル費用が高額(例:50万円)
  • 足場を組んだり解体する時の騒音が近所迷惑になる。
  • 足場が妨げになって変なダクトレイアウトになってしまう事がある。(足場ありきのダクトレイアウト)

などなど、思わぬデメリットがあり、エアコン取り付け工事の為に足場を組むのは現実的ではありませんし、エアコンの取付自体を諦めてしまう方も少なくありません。

Hans / Pixabay

結局ハシゴを用いての工事が主流

足場はあまり現実的ではないとなるとやはりハシゴを用いての工事になります。ですがそれはそれで安全に関する問題があります。

ハシゴ作業で必要な安全対策を怠った工事を行うと、「ハシゴからの墜落」 「ハシゴの転倒による転落」 など、非常に危険な災害が発生し、骨折を始めとする重篤な事故、最悪の場合死に至ることもあるのです。

厚労省発表のデータによると、ハシゴ等からの墜落・転落による怪我1年間で平均1000人程度、そのうち『死亡に至った』ケースは毎年30人です!

かなりの数だと思いませんか?

実際、私自身、10年以上前ですが2階のハシゴ作業を行っていた際、風に煽られてハシゴが転位(転倒)してハシゴと一緒に地面に叩きつけられた事があります。(奇跡的に足首の捻挫だけで事なきを得ました)

また、同業の知り合いは室外機を担いでハシゴに乗り(危ない!)バランスを崩して室外機と共に地面に落下し、背骨が粉砕骨折してしまうという大怪我を負いました。

過去の私もそうでしたが、エアコン工事業界は安全に対する認識が著しく低いのです。また、お客様側も同様に作業者の安全に対する意識が低いのが現状です。

原因は色々ありますが、安売り安売りで工事単価が極端に下げられてしまっている昨今、作業者自身が安全よりも作業効率を重視してしまっている結果(そうせざるを得ない)だと思います。

また、『エアコン取付費無料!』と、あたかもエアコン取り付け工事が簡単な工事かのように思わせてしまうような広告をしている販売主側にも原因があります。←諸悪の根源という声も・・・

 

法令に則った『高所作業』を行うには、最低でも以下の措置が定められています。

高所作業は高い場所での作業になりますので、人間だったら多かれ少なかれ恐怖心が湧いてしまい、地面に足をつけて作業しているのと同じ施工精度は望めません。

ですので安全に作業を行うことができる環境を自分で作り出し、恐怖心をなくして施工するのが本当のプロだと思います。

高所作業の法令では以下のような決まりがあります。

・高所用のヘルメットの着用
・墜落防止措置
・フルハーネスの着用←これは義務になりました

最低でも上記の事は守らなければなりません。
お客様のお宅にエアコン取り付け工事にやってくる工事業者はしっかりと上記の安全対策を講じているか、しっかりと確認してから依頼することをお勧めします。

万が一工事の当日、安全対策を怠っているようでしたら即刻作業を中止してもらい、別のエアコン取付業者を手配した方が無難です。
最近、危ない工事を平気で行っているエアコン工事業者が非常に目に付きます。本当に危ないので今回のような投稿をしています。

以下の画像は厚労省発行の資料です。

お客様の大切な新築一戸建て、お客様の大事な人生の中で、工事に来た業者が大怪我をしたり死亡してしまった・・・なんてことになって暗い気持ちになってほしくないのです。エアコン取り付け工事に携わる人間からの切なる願いです。

危ないだけじゃない、ずさんな工事

インターネットで検索すると、『3階建のエアコン工事お任せください』 『室内機3階室外機1階地面でも大丈夫』 『他で断られた工事お任せください』等の文言を掲げたエアコン工事会社のホームページが増えてきました。もちろんのことですが弊社クアトロテクノサービスのホームページ・ブログ等でもよく見られる文言ですね。ホント増えましたね・・・

また、そういう文言が踊っているサイトを深く見てみると『安さ一番!』とか『どこよりも安くします』とか『安いけど高品質です』等、安さも売りにしている会社が目に付きます。(弊社は安さを売りにはしていないので記載はありません)

正直、『工事品質(クオリティ)』と『安さ』と『安全』は比例すると考えていいと思います。

工事費が安ければその分工事品質は安い(チープ)でしょう。安くするためには安い材料を使ったり、工程を省いたり(手抜き)するしか無いのですから。

工事費が安ければその分安全に対する対策は低いでしょう。安全対策を講じるためには様々な装備や道具が必要ですから。

工事費を安くしたら1日に件数をこなさなければ商売として成り立たちません。

1日に何件もこなそうと思ったら1件に充てられる作業時間は必然的に短くなります。

作業時間が短ければどんなに技術があっても施工品質は落ちてしまいます。

そういうサイトをよ~く見てみてください。特に一戸建て3階のハシゴ作業の風景の写真。

ハシゴをとんでもない箇所で固定していませんか?細い紐みたいなもので固定しているのが見えるかと思います。

例えば・・・

雨樋の支柱

雨樋そのもの

ガス管

水道管

排水管

このやり方、一歩間違えばお客様の家を破壊します!!

上記に挙げた箇所ですが、耐荷重と強度がそもそも人間の体重+ハシゴの重量を支えられるほどではありません。雨樋の支柱ならあくまで雨樋を支えられる強度、強風にも耐えられる強度しかありません。普通に壊れます。

雨樋の樹脂製の支柱にヒモでハシゴを固定したとします。65キロの作業者が15キロのハシゴに乗って作業を開始し、バランスを崩してハシゴが転位(傾くこと)し始めた場合、樹脂製の支点一点に相当な荷重がかかります。一瞬で樹脂製の支柱が破壊されます。想像できますでしょうか?支えを失ったハシゴはそのまま転倒し、周囲の屋根や壁、お隣さんの住宅などにぶつかり様々な物を傷つけ破壊します。作業者は地面に転落し、大怪我を負います。

その他の箇所も落ち着いて考えるととんでもないと箇所で固定しているのがご理解いただけるかと思います。本当に危険ですし、非常にリスクが高いです。

関東近郊ですと、どうしても隣地との隙間が狭い箇所でのハシゴ作業になり、ハシゴの角度が十分に確保できません。必然的にハシゴが垂直に近い角度になりますからハシゴの固定をしなければ工事は行えないのでハシゴを固定するのは分かります。ですが、上記に挙げたような『十分な強度がない箇所』を使ってのハシゴの固定は不安全作業なのはもちろんの事、破壊行為になる場合もあります。

依頼する前にその辺りをしっかりとチェックすることをお勧めします。何かあってからでは遅いのです。

※文章未完成ですがアップします。夏本番前に高所作業系のご相談が増えてきたので非常に心配しています。暇を見て写真等も入れつつ分かりやすく解説したいと思います。

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  • この記事を書いた人

yu-ki

当ブログの管理人の清 祐樹(せい ゆうき)です。 エアコン工事・ロープ高所作業の専門業者、株式会社クアトロテクノサービスの代表取締役社長です。

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